雑記
三 月白展示室
「どの家庭にもアート用のテーブルがあって、その上にいろんなものが一つ一つ置かれていて、その家の人たちは、そのものを非常に注意深く観察したり、そのものに出会ったりすることができる−−−そんなふうにあるべきだと思うね」
パパ・ユーア クレイジー W・サローヤン 伊丹十三/訳
この素晴らしいせりふに触発されてアート用のテーブルを用意して、物物を見詰める場として設けたのが月白の展示室です。先日、天草の陶藝家 金澤尚宜の個展を開催しましたが、そういった企画展がなくとも、部屋の真ん中に置かれた黒いテーブルの上に見詰めていただきたい物を置いて、それぞれ皆様にも見詰めていただければと思っています。
よく勘違いされるのですが、レンタルスペースではありません。なのでお金を出せば場所が借りられるという仕組みではありません。
ではどういった基準で展示物や作家を選んでいるかというと、月白と響き合うかどうかです。
僕自身、美術藝術を専門的に勉強したわけでもなく、目利きでもないから、作品を拝見して、これはいいこれは悪いの判断はできないけれど、響き合うかどうかはわかる。それは作者との会話や、作品自体が持つ気配のようなものです。
たまに売り込みのような話があり、実際に作品を見てみることもありますが、なかなか響き合うものに出会うことがないので、基本的には自分自身で足を運び、観て、対話をする、という方法をとっています。
とはいえ、こちらから声をかける、というのはとても緊張します。うちみたいなところでやってくれるのだろうか、どういう伝え方をすれば伝わるだろうか。こちらは合うと思い込んでいるけど、それはとんだ勘違いではないだろうか。などなど、いろいろ考えてしまいます。こちらのせいで相手の魅力を損なうことだけはしないように努めています。できているかはわからないけれど。